行間の記録

ひとり読みに挑戦中の年長さん「ひばり」と、活字中毒の母「くるみ」の読書の記録。

泡沫候補と笑うことなかれ - 黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い/畠山理仁

「 選挙ってこんなに大切なものなんだ」と気づかされる良著。

自分の持つ一票の重みを感じることができるので、中高生、大学生、選挙に馴染みのない大人に是非読んでもらいたいノンフィクションです。

概要

2017年 第15回 開高健ノンフィクション賞受賞作。

2016年の東京都知事選に出馬した、世間にはあまり注目されていない立候補者たちを追ったルポ。

 

泡沫候補」という不名誉な呼び方をされてしまう彼らが、おそらく没収されるであろう、供託金300万円を払ってまで立候補する理由は何なのかを、綿密な取材で解き明かしていく、熱い思いとユーモアに溢れる本です。

尚、著者は彼らのことをリスペクトを込めて「無頼派候補」と呼んでいます。

 

ネット上でも「キワモノ」扱いされ、ネタ的に消費されがちな無頼派候補たちにも、彼らなりに真剣な思いがあって立候補していることがよくわかります。お金も時間も情熱もかけて出馬するのだから、彼らなりに理想を描いていて、政治の舞台でやりたいことがあるのです。

「名もなき人々が、世の中を良くしようと行動することが選挙なのだ」と基本的なことを再確認させてくれる本です。

 

取材対象は、マック赤坂氏、後藤輝樹氏など。

奇抜な演説やポスターで注目を集めるものの、報道では道化のように扱われがちな無頼派候補たちの、本当に訴えたいことに耳を傾け、記してくれた良著。

感想

私の想像もしなかった世界のことが書いてあり「こういうのをジャーナリズムと言うのだろうなあ」と感心した一冊です。 

読んだのは昨年なのですが、先日の千葉県知事選挙に後藤輝樹氏が出馬していたので、この本のことをブログ書きたいな〜と思い、書いてみました。

 

私はこの本を読むまでは無頼派候補たちの思いなどは考えたこともなく、いわゆる主要候補だけを比較して誰に投票するかを考えていました。

無頼派候補たちの個性が強すぎてスルーしていましたし、「到底当選しなさそうな人よりも、当選そうな人に票を入れた方が良い」という気持ちもありました。

 

でもこの本を読むと、票を入れた候補が落選したとしても、「その人の掲げていた政策を支持しています」という意思表示になり、その票数が多ければ多いほど、当選者もその政策を無視できないのだということがよくわかりました。

自分が投票した候補者が落選してしまうのは悲しいものですが、政策の支持を表明するために真面目に考えて投票するのは無駄ではないのです。

 

著者の畠山さんは都知事選以外でも、さまざまな選挙の現場で無頼派候補たちを取材しています。畠山さんの記事や動画をチェックしていると、選挙がちょっと楽しくなりますよ。

畠山理仁チャンネル(畠山理仁) - ニコニコチャンネル:社会・言論 (nicovideo.jp)