行間の記録

ひとり読みに挑戦中の年長さん「ひばり」と、活字中毒の母「くるみ」の読書の記録。

ノラネコぐんだんと海の果ての怪物/工藤ノリコ

年中さんが、大人気のノラネコぐんだんシリーズの読み物「ノラネコぐんだんと海の果ての怪物」を読んだ時の様子についてお伝えします。

手に取ったきっかけ

ひらがなとカタカナが読めるようになった、ノラネコぐんだん好きの年中さんにちょうど良さそうだと思って手に取りました。

年中さんの秋頃までにひらがなとカタカナを読めるようになったので、クリスマスプレゼントにしました。元々絵本のノラネコぐんだんシリーズが好きだったので、児童書への足掛かりにちょうど良いのではないかと思い、「絵本ではない本」の1冊目として与えてみました。

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ノラネコぐんだんと海の果ての怪物/工藤ノリコ

どのような位置付けの本か

絵本を卒業して、児童書へ進むお子さんをターゲットとした本です。

人気の絵本シリーズ「ノラネコぐんだん」から生まれた、読み物シリーズの1作目です。主役のノラネコぐんだんはそのままに、お話のスケールや難易度を小学生向けに調整した新たなシリーズ作品です。

絵本のノラネコぐんだんシリーズを読み聞かせしてもらって育ったお子さんたちが読み聞かせを卒業しつつあるので、その受け皿となるべく出版されました。出版元である白泉社はノラネコぐんだんのキャラクターグッズ展開も行っており、ノラネコぐんだんに対する期待をひしひしと感じます。

公式サイトによると、「読んであげるなら4歳~、自分で読むなら小学校低学年~。」となっていますが、小さなおばけシリーズ(アッチコッチソッチシリーズ)と比較すると難しい印象です。文字は小さめ、ふりがなはあるものの、漢字も多めです。わかち書きもされていません。

また、絵本のノラネコぐんだんシリーズは、全て誰かのセリフとして書かれているのに対して、こちらの読み物シリーズは地の文もたっぷりあります。絵本シリーズと比較するととても硬派な印象です。

どのようなお話か

ノラネコぐんだんが、海の果てに住む怪物にさらわれたお姫さまを救出しに行くお話です。

海辺で魚を釣って暮らしていたノラネコぐんだん。ある日「魔法の貝がら」を拾います。この貝がらを使えば、海の中を自由に歩き回れるということを知り、ノラネコ軍団は海の中で魚を獲れるだけ獲るようになってしまいます。

海の国の王さまは、魚を粗末にするノラネコぐんだんを裁判にかけるため、お城に呼び付けます。裁判が始まろうとしたその時、王さまの一人娘のお姫さまが海の果ての怪物にさらわれてしまいます。海の果ての怪物は、海に住む者には倒せないという伝説があります。困り果てた王さまは、陸に住むノラネコぐんだんに、お姫さまを救出して来るように命じるのでした。

年中さんが自分で読んだ様子

絵本と比較すると長いお話ですが、内容はわかりやすいと思いました。読み聞かせであれば年中さんにも十分理解できる内容でした。

自分で読む場合は、今まで絵本しか読んだことがないお子さんには少し難しいと感じました。

うちの子には少し難しかったと思いますが、本人が達成感を得たようなので、チャレンジさせて良かったと思います。

自分で読むことを前提として、以下に良かった点と難しいと思った点を詳しく書いておきます。

良かった点

テーマがわかりやすいので飽きにくい

お話の大きなテーマは「怪物を倒してお姫さまを助ける」というおとぎ話の王道物語なので、年中さんでも筋を見失うことなく物語に入っていけます。

挿絵が多く理解を補ってくれる

3〜5ページおきに挿絵が入っており、想像を補い、物語の理解を助けてくれていると感じました。

章がこまかく分かれているのでペース配分しやすい

5〜6ページおきに章がわかれており、子どもの様子を見ながらペース配分ができました。

平易な文で書かれているので理解しやすい

ひとつひとつの文は短め、やさしい言葉で書かれているので、子どもにとって読みやすい文章だと感じました。漢字も出てきますが、ふりがながふってあるので、ひらがなとカタカナが読めるお子さんであれば読み進めることができます。

漢字のレベルは「船」「魔法」などが出てくるので、小学校2〜3年生以上ではないかと思います。

難しい言葉がないので理解しやすい

うちの子の場合、読んでいる途中で「言葉がわからないから教えて」と質問してくることはありませんでした。「カジキ」「はまぐり」など、もしかしたら知らないかもしれない言葉はいくつか出てきましたが、挿絵を見てなんとなく理解したようです。

児童書でも、比較的古い作品を読むと、現代ではあまり使われていない言葉や言い回しが出てくることがあるのですが、本作は新作であることもあり、特に違和感を感じる言葉はありませんでした。

難しいと感じた点

文字が小さいので読み飛ばしや2度読みが起きやすい

定規で測ってみたところ、1文字は5mmほどでした。文字が小さいと、当然ながら行間も狭くなります。もうひとまわり大きな文字(8mm程)で書かれている本と比較すると、行を読み飛ばしてしまったり、同じ行を2度読んでしまう頻度が多いように感じました。

わかち書きではないので言葉の切れ目がわかりにくい

わかち書きというのは、例えば「今朝はパンを食べました。」を「今朝は パンを 食べました。」のように、ある程度の意味を持った言葉のまとまりごとに、空白を入れる書き方のことです。

特にひらがなが多い文章の場合、わかち書きされている方が読みやすさは上がります。「きょうはパンをたべました。」よりは「きょうは パンを たべました。」と書かれているほうが、意味がわかりやすくなります。

この本はわかち書きではないので、普段言い慣れない言葉が入っている文の場合、言葉の意味の切れ目がわかりにくかったようです。

お話が長いので興味の維持が難しい

この本は90ページ超あり、絵本と比較するととても長いので、お子さんによってはすべて読み終わるまで興味を維持するのが難しいのではないかと感じました。うちの子はノラネコぐんだんが好きなので、それほど気が逸れることなく読み終えたのですが、読み終わるまでに数日かかりました。

この本を与えて親が感じたこと

初めての「絵本ではない本」にしては少し難しいものを与えてしまったかなと思いましたが、最後まで読み終えることができ、本人が満足そうにしていたので、与えて良かったと思います。

「読書は楽しい」と感じる第一歩になったようで、このあとから色々な本を自分で読みたいと言うようになりました。

読み始めの頃は一文字一文字確認しながら読み上げていたのですが、一冊読み終わる頃には「ノラネコぐんだん」などの頻出語はすらすら読み上げられるようになっていました。お話の内容についても「ぜーんぶ、面白かった!!」とのことなので、本人なりに理解しているようです。

もう少し易しい本も与えながら様子を見て、幅広い読書体験をさせてあげたいです。

  

ノラネコぐんだんと海の果ての怪物 (コドモエのほん)