行間の記録

ひとり読みに挑戦中の年長さん「ひばり」と、活字中毒の母「くるみ」の読書の記録。

話は最後まで読んでからだ - 息子がいじめの加害者に?/大原由軌子

いじめの加害者になった側から描いたコミックエッセイです。読んでいて気分の良いお話ではありませんが、小学生くらいのお子さんをお持ちの方には気になる内容だと思います。

概要 

「(著者の息子)タケが、仲良しだったはずのSくんを複数人でいじめているようだ」とわかるところから物語が始まります。

著者と著者の夫はタケに事実を確認し、Sくんのお宅に出向いて謝罪し、学校で話し合いをし、タケもきちんと反省し、カウンセリングを受け…と、真摯に対応し、タケとSくんの本人同士も和解します。

ところが、タケの弟が先生から目をつけられて体罰を受けたり、全校集会でタケだけが吊し上げのような目に遭ったり、Sくんのお母さんから行き過ぎた要求を突きつけられるようになってしまいます。

これは一体どういうこと?著者と夫が調べていくと、実はSくんのお母さんが…。

感想

本作は、いじめの加害者になった側の心情を描いている稀な作品です。「加害者なのに開き直っている」等の批判もあるようですが、今まで誰も描いてこなかった立場を描いたこの物語は、たくさんの人の目に触れるべきだと思いました。

 

私は人間がが3人以上集まれば、必ずいじめの芽は生まれるものだと思っています。つまり、だれもがいじめの加害者になる可能性を持っているというのが私の見解です。

それでもいじめに発展しないように、理性で自らを律していくのが大人。こどもはまだ未熟なので、こどもたちにかかわる大人には、この芽を摘み取っていく責任があります。

この本を読むと、加害者は「いじめよう」と思ってやっているわけではないことがよくわかります。懲らしめよう、いけすかない、そのような気持ちがいつのまにかいじめに発展してしまうということは、心に留めておく必要があります。

  

しかし、ここまで実話をはっきり描いてしまって大丈夫なのでしょうか…?誰にもあまり顧みられていなさそうなSくんが心配になります。

実話なだけに、面白がって良いのかはよくわかりませんが、「ママ友がこわい」など野原広子さんの漫画が好きな方には、お話としても楽しめると思います。

 

途中まで文春オンラインで読むことができますが、たしかに無料の部分は「加害者のくせに開き直っている」と思われてしまうようなところで終わっています。途中で読むのをやめてしまうと著者の意図がわからないので、是非本を手にとって、最後まで読んでみてください。