行間の記録

ひとり読みに挑戦中の年長さん「ひばり」と、活字中毒の母「くるみ」の読書の記録。

誰もが心の中に持つ差別とどう戦うか - キャラメル色のわたし/シャロン・M・ドレイパー

11歳のイザベラの目を通して、現代のこどもたちを取り巻く諸問題と、それを乗り越えて行くこどもたちの強さが描かれた名作。小学校高学年のお子さんから、おとなにもにおすすめの1冊です。

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キャラメル色のわたし/シャロン・M・ドレイパー

概要

11歳のユーモアあふれる女の子、イザベラの目を通して、現代のこどもたちの直面している社会的な問題と、イザベラやクラスメイトたちが、力を合わせながら問題を乗り越えていく様子がいきいきと描かれます。

小学校高学年くらいのこどもを対象とした小説です。

主題となっているのは、主に二点。

両親の離婚からステップファミリーを形成するまでの過程と、親友がヘイトクライムの被害者となってしまい、人種差別とどのように戦えば良いのかを考えて行く過程です。

深刻な主題を抱え、物語の中でとても悲しい事件が2度起きるのですが、イザベラ自身のユーモアあふれる力強さ、家族からの愛情、クラスメイトたちとの友情が心に残る、明るい作品となっています。

 

 

感想

こどもたちに是非読んでほしいと同時に、おとなにもたくさんのことを気づかせてくれる物語です。悲しく辛い場面もありますが、読後は幸せな気持ちになれます。

 

イザベラが語りかけてくるように書かれている、読みやすく、リズムのある文体で、一気に一冊読み終えてしまいました。

舞台はアメリカではありますが、イザベラがスライム作りが好きだったり、ピアノの発表会に出るために練習をしていたり、LUSHで買い物をするのを楽しみにしていたりと、日本の小学生とも共通する点がたくさんあるので、日本の小学生も共感を持って読める物語です。

 

おとな目線で読んでも気づきがたくさんありました。

両親の離婚についてこどもが意見を表明する場がないこと、共同親権により2人の親の家を行き来しなければならないこどものしんどさは、私は言われてみなければ気づかないことでした。

ヘイトクライムに対抗するために、イザベラやクラスメイトたちが考えだした方法も、おとなでもすんなり思いつかないような、とても素敵で勇気が出るものでした。困難を抱えた人を励ます方法として、私も実践したいと思いました。

また、「差別はよくないことだ」と身をもって知っているイザベラが、うっかり「白人なのにダンスが上手いね」と言ってしまったり、「オリエンタルで素敵ね。どこの島から来たの?」と声をかけられて嫌な思いをしたり、誰の心の中にも差別の芽があるのだということを具体的に示してくれています。

こどもたちにもこんなに身近に差別があるのだと思い知らされると同時に、これは「アメリカだから」ではなくて、見えないだけで日本にもいくらでもあるのだという目線も忘れないでいようと思いました。

 

ぼくがスカートをはく日」と並んで、現代っ子の気持ちを鮮やかに描き出した、アメリカ文学の名作です。

 

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